コラム
架空債権によるファクタリングは刑事罰の恐れあり!絶対にやめよう!
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、法人や個人事業主が持っている買取可能な売掛債権(売掛先に対する未回収の請求書)をファクタリング会社に売却し、 売掛金の回収を待たず、簡単、最短即日に資金を得る請求書買取型サービスです。請求書を発送し、30~60日後の支払期日に指定口座へ入金してもらう売掛け取引が一般的です。売掛金を回収するまでの間に、仕入代金や固定費、税金や借入金返済などの支払いが先行してしまえば、資金繰りは悪化します。 ファクタリングを利用することで、企業はファクタリング会社に手数料を支払い、売掛金を前倒しで現金化することができる仕組みのため、資金繰りをサポートできるおすすめ資金調達方法です。
架空債権とは?
架空債権とは、実際には存在しない債権をあたかも存在するかのように見せかけたもので、企業による不正行為の一つです。企業が資金調達を行うために、架空の売上や取引を作り出し、これを元にして債権を偽装することがあります。架空債権により、本来得られるはずのない資金をファクタリング業者に譲渡し、資金調達を行います。利用者とファクタリング業者の2社間で契約する場合、審査の際に見抜くのが難しいケースもあります。
架空債権の作成や使用は、詐欺罪や会計不正などの重大な法律違反であり、刑事罰や罰金などの厳しい処罰を受ける可能性があり、重大な法的責任を問われることとなります。
架空債権でファクタリングすると?
最近の経済状況下で、架空債権を利用したファクタリングが急増しています。
架空の債権を用いてファクタリングを行うことは違法行為となり、詐欺に該当します。
本記事では、架空債権でファクタリングした場合のリスクや法的な影響、注意点についてわかりやすく解説します。また、関連する刑事事件についても触れていきます。
金額の水増し
架空債権でファクタリングを行う際に行われる典型的な手法の一つが金額の水増しです。実際の取引や契約に基づく債権や費用の金額を意図的に過大に計上することにより、企業は売上高や利益を実際よりも多く見せかけることができ、財務状況が健全であるかのように装うことでファクタリング業者からより多くの資金を得ることを可能にします。例えば、100万円の債権を200万円に水増ししてファクタリング業者に買取らせると、業者から本来得られる資金の倍額を受取ることができます。金額の水増しは、短期的な資金化に有利に働くことがありますが、最終的には深刻なそういった行為がバレることで信用失墜や法的問題を引き起こすリスクがあります。
債権の二重譲渡
債権の二重譲渡は、同一の債権を複数の事業者に譲渡する行為です。債権の二重譲渡は法律上重大な問題を引き起こし、債権者間の紛争を招く可能性が高い行為です。さらに、二重譲渡によって資金調達が不正に行われ、事業の信頼性が著しく低下します。
例えば、A社が100万円の債権をB社とC社の両方に譲渡した場合、B社とC社は同じ債権に対して支払いを求めることにより、B社とC社は両方が自分の権利を主張し始め、大きなトラブルの原因となります。結果として、A社の信用は失墜し、最悪の場合法的措置を受けるリスクが高まります。このような状況を防ぐためにも、債権の二重譲渡は絶対に避けるべきであり、不正行為が発覚すれば、法的な制裁を受けるだけでなく、企業の信用度やブランド価値が大きく損なわれます。これは、ファクタリング業者や債務者が最も注意すべき点の一つです。
二重譲渡を防ぐために行われる債権譲渡登記
2社間ファクタリングでは売掛先に対して通知を行ったり承諾を得るということはありません。その代わりに債権譲渡登記を行うことがありますが、これは二重譲渡によるトラブルを防ぐためです。債権譲渡登記とは、不動産登記や商業登記と同じように、法務局で手続きを行い誰がその債権の所有者か証明する手続きです。公的に所有者であることを証明できるため、ファクタリング会社が買い取った売掛金を別のファクタリング会社に売却されてしまっても、すでにその権利が移転していることを証明することができます。そして2社間ファクタリングで契約を結ぶ前に、登記が行われていないか確認することで売却済の売掛金を買取ることを防ぐことも可能です。ファクタリング会社が抱える未回収や貸倒れリスクを軽減するために、2社間ファクタリングでは債権譲渡登記を必須とするケースも少なくありませんが、登記にかかる費用は利用者が実費で負担することになります。
また、資金調達後に銀行融資などを検討している場合においては、登記情報は誰でも閲覧可能である点を理解しておくことが必要です。誰でも閲覧できるということは、売掛先だけでなく融資の審査を行う銀行も内容を把握することが可能ということになります。銀行に融資の審査を行ったとき、売掛金に対する調査も行われますので、その際に債権の所有者が第三者に移転していることを知られれば、審査落ちすると考えられます。
決算書の粉飾
架空債権を利用して決算書を粉飾する企業が存在します。決算書の粉飾には、実際には存在しない売上を計上することで、利益を大きく見せかけ、架空の取引を作り出し、売上高や利益を増やす架空売上の計上。企業が本来その期に計上すべき費用や損失を、次期以降に先送りすることで当期の利益を実際よりも大きく見せかける費用の先送り(繰延)。実際には売れ残っている在庫を意図的に過大に計上し、資産が多くあるように見せかける在庫の過大計上。借入金や未払金などの負債を帳簿に計上しない、または過少に計上して、財務状況を健全に見せかける債務の隠蔽があります。
決算書の粉飾をすることで金融機関などの銀行からの融資の際や投資家からの信用を得ようとするためです。しかし、架空債権を利用した決算書の粉飾は、企業の信頼を損ねる重大な不正行為です。このような粉飾決算は、内部および外部からの検査で発覚した際には、企業の信用が失墜するだけでなく、法的な罰則を受ける可能性もあります。したがって、短期的な利益を追求するために架空債権を利用することは決して賢明ではなく、長期的な企業の存続を脅かす行為です。企業は透明性を保ち、正確な財務報告などの対応を心がける必要があります。
刑事事件
架空債権は刑事事件に発展する可能性があります。これは架空の債権を使って資金調達する行為が違法であり、法的に重大な問題を引き起こすためです。架空債権を使って資金調達を行う行為は法律に反しており、以下のような罪が問われます。
詐欺罪(刑法246条) 架空債権を利用してファクタリング会社から資金を騙し取る行為は、詐欺罪に該当します。詐欺罪では、相手を欺いて財産を取得する行為が処罰の対象となり、10年以下の懲役刑が科される可能性があります。ファクタリング会社は、実際には存在しない債権に基づいて資金を提供しているため、被害者となります。
ただし、架空債権取引でもファクタリング業者がその事実を知っていれば罪には問われません。ファクタリング業者側はその売掛債権が本物かどうか、色々な方法で確認します。最近、ファクタリング業者がノルマ達成のために不正取引を持ちかけてくることもあるようです。「適当に書類を作ってくれれば大丈夫ですよ」などと不正取引を持ちかけてくることもあるので、ファクタリング業者が知っているわけですから詐欺罪にはなりませんが、悪徳なファクタリング業者の甘い言葉にはのらないようにしましょう。
詐欺罪は破産しても免責にならない!破産が成立し免責が認められると、借金などの債務の支払義務を免れることができるようになります。しかし、たとえ破産が成立したとしても、架空債権のファクタリングによる罪は別問題です。詐欺罪が免責されることはありません。「破産すればいい」というような、安易な考えは持たないようにしましょう。
有価証券偽造罪・私文書偽造罪(刑法159条・161条) 架空の請求書や契約書を作成して債権が存在するかのように見せかけ申し込みした場合、文書偽造罪が適用されることがあります。この罪には、5年以下の懲役刑が科される可能性があります。ファクタリングにおいて請求書や契約書は重要な書類であるため、偽造が発覚すると重大な法的問題となります。
組織的犯罪処罰法の適用 架空債権によるファクタリング詐欺が組織的に行われている場合、組織的犯罪処罰法が適用されることがあります。組織的な場合、刑罰が重くなり、より厳しい処罰が科される可能性があります。
民事訴訟の可能性 架空債権によるファクタリング詐欺が発覚した場合、刑事責任とは別に、ファクタリング会社が被害金の返還を求めて民事訴訟を起こすこともあります。これにより、資金の返還や損害賠償を求められる可能性が高いです。
正しいファクタリングのやり方とは?
ファクタリングを正しく利用するには、正当な売掛債権を使わねばなりません。気づかずに架空債権を作っている場合もあるため、利用する前に適切であるか確認することも大切です。また、悪質なファクタリング業者に架空債権の作成を持ちかけられたとしても、応じないようにしましょう。
ファクタリングのルールを理解することも大切です。同じ売掛債権を、複数の業者へ譲渡するのはルール違反です。ファクタリングを利用する際は、自社にとってできるだけ条件の良いファクタリング業者に売掛債権を譲渡するため、複数の業者に見積もりを取ります。その際、同じ売掛債権を複数の業者に譲渡してしまうかもしれません。意図していなくても、法律上では罪に問われます。複数のファクタリング業者とやり取りをしている場合は、慎重に行う必要があります。
さらに、手数料率を確認することも大切です。ファクタリング手数料の上限は法律によって定められておらず、ファクタリング業者が自由に設定できます。平均手数料相場は1%~20%ですが、30%以上の高額な手数料を取る悪徳業者もあります。自社のニーズにあった適切な手数料相場の範囲内で設定している優良ファクタリング業者のメリット・デメリット等、比較して選ぶようにしましょう。
最近では面談不要のオンラインでの申し込みが多いですが、面談があればファクタリング会社へ赴くため、オフィスが実際にあるかを確認できます。また、オフィス内の様子や対応などを見て、優良なファクタリング会社かどうかを判断できます。オンラインではファクタリング会社までいかないため、実在しない業者の可能性も否めません。ファクタリング会社の従業員の対応を判断材料にもできません。そのため、気づかずに悪徳業者と契約する可能性があります。オンラインのファクタリング業者を利用する際は、ホームページに記載されている住所に会社が実在するか、確認することが大切です。実際に利用した人の口コミ情報なども、参考にしてください。質問事項はメールや電話で行うことになります。しかし、電話での問い合わせはなかなか担当者につながらない、メールでの問い合わせは返事が遅いなど、時間がかかることがあります。疑問を持ったまま契約してしまうと、不本意な内容でファクタリングを利用することになりかねません。
契約書類・約款内容を確認
ファクタリング契約には細かい条件が含まれているため、必要書類や契約約款を確認することも大切です。契約書や約款は難しい言葉で記載されているため、契約内容を隅々まで目を通さない方がいるかもしれません。しかし、悪徳業者が利用者に不利な条件を記載し、契約させようとするケースもあります。必ず契約書を確認し、リスクをしっかり把握してから契約します。特に、償還請求権の有無や、手数料の計算方法を理解しておくことが重要です。他社に契約方式等、不審に感じたら無料相談など問い合わせることが大切です。
ビジネスにおいて、一切の違法行為に手を染めず、透明性のある経営を心掛けることが重要です。違法行為から自社を守り、企業の信頼性を維持するためにも、法律に従ったビジネス活動を行い、正当な債権のみを取り扱うことを徹底しましょう。透明性のある管理体制と法的に正しい手法を採用することで、刑事事件のリスクを回避することができます。同時に、従業員や取引先企業との安心した信頼関係を築くことが、長期的なビジネス成功の鍵となります。