
コラム
電子記録債権とは?ファクタリングとの違いをわかりやすく解説!

電子記録債権とは?ファクタリングとの違いをわかりやすく解説!
ビジネスの資金調達で重要な「電子記録債権」と「ファクタリング」ですが、その違いを理解していますか?どちらも資金繰りを円滑にするための方法ですが、それぞれの利用方法やメリット、デメリットは異なります。自社の経営状況や資金ニーズに応じて適切なツールを選ばないと、無駄なコストや手間を生むだけでなく、資金繰りの悪化を招く可能性もあります。この記事を通じて、これらの基本的な違いや仕組みを簡単に解説し、最適な選択のための知識を提供します。
電子記録債権とは?
紙の手形および小切手は、2026年度末を期限として廃止されることが予定されています。政府や金融業界は廃止にあたって全面電子化を図っており、現在、紙の手形や小切手を使っている事業者に対して、電子記録債権への移行をすすめています。
電子記録債権とは、従来の手形債権や売掛債権等をデジタル化し、電子債権記録機関のコンピューター(記録原簿)に登録することで、電子的に管理・取引することを可能にした新しい金銭債権のことで、略して「でんさい」とも言われています。
記録機関の原簿の持ち主を変えることで簡単に譲渡を行うこともできます。まだまだ導入への障壁が多く、浸透がされていないこともあり、電子債権化が進んでいないのも事実ではありますが 、業務の効率性を高め、さらには二重譲渡や架空請求等のリスクもなく、従来の問題点を克服した金銭債権です。
ファクタリングとは?
ファクタリングは、企業が売掛債権(請求書)をファクタリング会社に売却し、取引先からの支払いを待たずに現金化する資金調達法です。この金融サービスにより企業は最短で資金を確保でき、資金繰りの安定化や改善が期待できます。特に急な資金需要が生じた場合や、融資や手形取引と比べ簡便でスピーディーな手続きがメリットとなります。
ファクタリングの特徴
ファクタリングは、未回収の売掛金を早期に現金化する仕組みです。ファクタリングは大きく2種類に分類されます。一つは償還請求権なし型ファクタリング(ノンリコース)は、売掛債権を買取ったファクタリング会社が、債権が回収不能になった場合でも、売主(債権譲渡人)に返済を請求しない形態で、売掛金回収不能時のリスクをファクタリング会社が全て負う形式で、特に中小企業で利用されるケースが多いのが特徴です。
もう一つは償還請求権あり型ファクタリング(リコース)で、万が一売掛金が未回収となった場合、売主がその責任を負う形式です。手数料が低水準であるため、資金調達コストを抑える目的で選ぶことが多いです。
このように、ファクタリングを活用することで、企業の状況や目的に応じて資金繰りの改善やリスク軽減を図ることが可能です。
電子記録債権とファクタリングの違い
電子記録債権とファクタリングは共に資金調達方法として利用されていますが、その仕組みや目的に違いがあります。電子記録債権の場合、債権を譲渡する企業は取引先から譲渡債権の支払いが行われなかった場合、原則、取引先に代わってその債務を保証しなければなりません。これは保証債務と呼ばれ、この保証債務を原則として債権を譲渡する企業が負う必要があります。そのため、電子記録債権では、貸し倒れリスクは移転できません。
一方、ファクタリングは債権をファクタリング事業者に譲渡したあとは、債務を保証する必要はありません。保証債務はないものの、その分の手数料をファクタリング事業者に支払うことになります。そのため、ファクタリングは、貸し倒れリスクの移転可能です。
このような違いから、電子記録債権は主に資金回収を自ら管理したい企業、および手形や現金などの使用を最小限に抑えたい場合に適しています。ファクタリングは、早急に現金が必要な場合や、債務者からの回収リスクを軽減したいという目的で選択される手法です。
2つの方法はそれぞれの目的や経営状況、資金調達のニーズによって選択が求められるため、仕組みを理解した上で適切な方法を採用することが重要となります。
電子記録債権のメリット
1.事務負担の軽減
現物手形は発行や配送など事務処理に多くの時間とコストがかかっていました。電子記録債権を利用することで、事務負担を軽減させることができます。支払期日には取引銀行の口座に自動入金されるため、面倒な取立てなど不要であり、入金当日から資金を利用することが可能です。
2.管理のコストカット
電子記録債権を利用することで、手形取引における管理コストを削減できます。振り出す際に額面に従った収入印紙を貼付しなければならない紙媒体の手形と異なり、電子記録債権は印紙税が課されません。また、手続きにあたって郵送が不要なため郵送費用も削減できます。さらに、オンライン上で管理されるため、管理コストも削減できるでしょう。
3.盗難リスクの防止
現物手形を扱わないため、盗難や紛失のリスクを抑えることができます。
紙媒体では、厳重に管理・保管しなければ紛失や盗難する心配がありますが、電子記録債権はペーパーレス化されるため、紛失や盗難の心配はありません。
4.分割譲渡が可能
電子記録債権を利用することで、必要分のみ分けて譲渡・割引などに活用することができます。紙媒体の手形では分割譲渡することはできないのため、電子記録債権特有の大きなメリットともいえるでしょう。
5.二重譲渡の防止
電子記録債権を利用することで、債権の二重譲渡を防ぐことができます。
売掛債権では、債権譲渡登記など活用しなければ、架空債権売却や売却済みの債権を二重譲渡されるリスクがあります。しかし電子記録債権では二重譲渡などのリスクを避けることができます。
電子記録債権のデメリット
電子記録債権のデメリットには、導入や利用におけるコストが挙げられます。システム環境を整えるための初期費用や、登録機関への登録手数料、さらには運用に伴う経費などが定期的に発生します。これは中小企業や個人事業主にとって、大きな経済的負担となる可能性があるため、導入前にはこれらの初期費用や運用コストを十分に検討することが必須です。
また、電子記録債権の運用には、システムやその操作に関する技術的な知識やスキルが求められる点も重要な課題です。従来の紙ベースの取引や請求書に比べ、システムエラーやデータ入力ミスによる利用障害が生じる可能性が考えられるため、操作の仕組みを理解し、適切に運用する必要があります。
売掛先も電子記録債権を利用している必要がある
電子記録債権を利用するためには、売掛先も同じく電子記録債権の仕組みを導入している必要があります。電子記録債権は、電子債権ネットワークを通じて債権の発生や譲渡を記録し、取引を遂行するシステムです。このシステムの特性上、売掛先が電子記録債権に対応していない場合には、電子的な記録のやり取りができません。そのため、電子記録債権を導入する際には、売掛先が同様の仕組みを利用しているかを事前に確認することが欠かせません。自社と売掛先が電子債権ネットワークにアクセス可能であり、必要な契約が取り交わせることを確認した上で、スムーズに運用できる体制を整える準備が重要です。
電子記録債権を選ぶポイント
電子記録債権を選ぶ際には、自社の資金繰りや取引の特性を踏まえた選択が重要です。この選択が誤ると、効率的な資金調達や決済手段の利点を最大限に活用できないだけでなく、企業活動全体に悪影響を与える可能性があります。
電子記録債権は、スピーディな資金化や取引の透明性向上に寄与します。しかし、その利用条件や手数料体系は金融機関によって異なり、取り扱い条件が厳しい場合があるため、自社の経営状況に適しているかを慎重に確認する必要があります。さらに、取引先の導入状況も考慮に入れる必要があります。もし取引先が電子記録債権に対応していない場合、この仕組みを用いた資金調達はできません。
自社の状況に合致した電子記録債権の選択は、資金調達や事務効率化の成功において極めて大切です。取引金融機関への問い合わせや専門家との相談を通じて、自社と取引先双方のニーズを満たせる選択をしましょう。